文献紹介

嘘などの隠す心理を研究する際に役立つと思われる書籍を紹介します。書籍情報にリンクも貼ってあります。
研究会メンバーによる個人的な評価(専門性・読みやすさ)が★(最大5)で表現されています。
★が多いほど専門性が高く、読みやすいことを示しています。

「隠す」心理を科学する

専門性★★★★☆、読みやすさ★★★★★


欺瞞研で主催したシンポの内容をまとめた一冊です。人間の嘘から動物(イヌ、鳥など)の欺瞞まで幅広くカバーしてあります。特に最終章の村井先生の紙上討論は卒論、修論、博論のための研究の種がいっぱいです!ここだけでも一読の価値があります。一般的な読み物として、また嘘の研究に興味がある人に非常にお薦めです。

                    

書籍情報
太幡直也・佐藤拓・菊地史倫(編著)(2021).「隠す」心理を科学する:人の嘘から動物のあざむきまで.北大路出版.
●第1部 対人コミュニケーションからみた「隠す」心理
第1章 日常的な嘘の社会的機能
第2章 懸念的被透視感
第3章 欺瞞の手がかりと検出の正確性
●第2部 発達から見た「隠す」心理
第4章 子どもの嘘の理解
第5章 子どもの嘘の生起:語り・想起・会話に潜む嘘の発生因
第6章 自閉スペクトラム症児のあざむきの発達
●第3部 記憶からみた「隠す心理」
第7章 記憶の語り直しによる「自己欺瞞」
第8章 嘘による記憶の変容
●第4部 「隠す」心理の生理反応
第9章 末梢生理活動からの情報検出:隠匿情報検査
第10章 情報隠匿時の中枢神経系活動
●第5部 動物の「隠す」心理
第11章 サルとイヌのだまし合い:戦術的あざむきの進化
第12章 鳥類の「隠す」心理:ヒトや類人猿との比較
●第6部 「隠す」心理に関する研究の展開
第13章 紙上討論

嘘の心理学

専門性★★★★☆、読みやすさ★★★★☆


嘘に関係する心理学的研究を包括的にまとめている一冊です。内容は過去の研究から最近の研究まで幅広くカバーしてあります。一般的な読み物として、また嘘の研究に興味がある人に非常にお薦めの入門書です。

                    

書籍情報
村井潤一郎(編著)(2013).嘘の心理学.ナカニシヤ出版.
第1章 嘘の心理学
第2章 嘘の機能
第3章 嘘と非言語的・言語的行動
第4章 嘘を見破る
第5章 嘘を見破られる
第6章 嘘とパーソナリティ
第7章 嘘と発達
第8章 嘘と司法
第9章 嘘と精神生理学
第10章 嘘と精神分析

嘘と欺瞞の心理学 対人関係から犯罪捜査まで 虚偽検出に関する真実

専門性★★★★★、読みやすさ★★★☆☆


嘘、欺瞞に関係する研究を包括的にまとめている良書。嘘研のメンバーで訳しました!嘘はどのくらいの精度で見抜けるのか、見抜けない理由について網羅的に紹介しています。特に虚偽検出に関連する研究内容が充実しています。

                    

書籍情報
ヴレイ,A.太幡直也・佐藤拓・菊地史倫(監訳)(2016).嘘と欺瞞の心理学 対人関係から犯罪捜査まで 虚偽検出に関する真実.福村出版.Vrij, A. (2008).
(Detecting lies and deceits: Pitfall and opportunities 2nd edition. Chichester, UK; John Wiley and Sons.)

発現内容の欺瞞性認知を規定する諸要因

専門性★★★★★、読みやすさ★★★☆☆


人の発言内容にうそっぽさ(欺瞞性)を感じてしまう要因を明らかにするために、McCornackらの情報操作理論(Information manipulation theory)をベースに包括的な研究を行っています。欺瞞性認知や、嘘の社会心理学的な研究に興味がある人にお勧めの書籍です。博士論文をベースにしてあるため、ある程度専門知識が必要です。

                    

書籍情報
村井潤一郎(2005).発現内容の欺瞞性認知を規定する諸要因.北大路出版.

嘘とだましの心理学―戦略的だましからあたたかい嘘まで

専門性★★★★☆、読みやすさ★★★☆☆


2005年に開催された日本心理学会主催のシンポジウムをまとめた書籍です。錯覚、詐欺、虚偽自白、動物のだまし行動、虚言症など他の書籍には紹介されていない内容が幅広くカバーされています。

                    

書籍情報
箱田裕司・仁平義明(編著)(2006).嘘とだましの心理学―戦略的だましからあたたかい嘘まで.有斐閣.

現代のエスプリ:嘘の臨床・嘘の現場

専門性★★★★☆、読みやすさ★★★☆☆


臨床現場・採用面接での嘘、研究の捏造、エセ科学、記憶の植え付け、だまし絵の作り方、偽書がつくられる理由、仏教は嘘をどう考えるかなど他の書籍には紹介されていない内容が幅広くカバーされています。とくにだまし絵の作り方は、錯視が起こる条件などを網羅的にまとめられており、非常に参考になります。また、心理学的な研究ではありませんが、偽書や仏教と嘘の話題は他分野からの新しい視点を与えてくれます。

                    

書籍情報
仁平義明(編著)(2007).現代のエスプリ:嘘の臨床・嘘の現場.至文堂.

ウソ発見―犯人と記憶のかけらを探して

専門性★★★★☆、読みやすさ★★★☆☆


犯罪捜査での虚偽検出について主に紹介した本です。生理心理学の知見を交えて紹介されており、犯罪捜査に関する嘘を研究したい人には必携の本であるといえるでしょう。

                    

書籍情報
平伸二・桐生正幸・中山誠・足立浩平(編著)(2000).ウソ発見―犯人と記憶のかけらを探して.北大路書房.

暴かれる嘘―虚偽を見破る対人学

専門性★★★★☆、読みやすさ★★☆☆☆


嘘、欺瞞に関する研究を包括的にまとめた代表的な本です。前半は嘘をつくときの表情やしぐさなどの非言語的コミュニケーションの特徴について、後半はポリグラフ検査について詳細に説明してあります。和訳本もあります。嘘研究に関心を抱く研究者は是非一読することをお勧めします。

                    

書籍情報
エクマン,P.工藤力(訳)(1992).暴かれる嘘―虚偽を見破る対人学.誠心書房.
(Ekman, P. (1985). Telling lies: Clues to deceit in the marketplace, politics and marriage. New York: W. W. Norton.)

人はなぜだまされるか―進化心理学が解き明かす「心」の不思議

専門性:★★★★☆、読みやすさ:★★★★☆


錯覚が生じる理由、記憶が歪められる理由など、人が自分の周りの世界を実際とは異なって認識してしまう現象を「だまされる」と位置づけ、その理由を人間の進化の視点から考察しています。

                    

書籍情報
石川幹人 (2011).  人はなぜだまされるか―進化心理学が解き明かす「心」の不思議 講談社ブルーバックス

Deceptive communication

専門性★★★★★、読みやすさ★★☆☆☆


1990年代の書籍のため掲載されている研究はやや古いですが、欺瞞的コミュニケーションに関する研究がよくまとまっています。また、嘘の話し手と聞き手を想定したコミュニケーション・モデルが紹介されております。

                    

書籍情報
Miller, G. R., & Stiff, J. B.(1992). Deceptive Communication. Newbury Parks, CA: Sage.

Lying: Moral choice in public and private life

専門性★★★★★、読みやすさ★☆☆☆☆


1970年代の哲学者の書籍です。嘘、欺瞞の使用に関して非常にするどい観察と考察がなされています。日常生活における嘘、欺瞞の役割等を考えるときの良書です。和訳もあります。英語の方は読みにくい箇所がありますので、和訳を読んでみてから「ん?」と思った箇所を原文で確認することがお勧めです。

                    

書籍情報
Bok, S. (1978). Lying: Moral choice in public and private life. New York: Pantheon Books.
(ボク,S.吉田暁(訳)(1982).嘘の人間学.TBSブリタニカ)